『原油高、企業に重荷 製紙・タクシー…家計にも影』 (日経新聞)

 製造業や輸送に使う燃料が値上がりしている。トラックやタクシーの輸送燃料は昨年秋より1割以上上昇し、製紙会社のボイラーなどに使う重油も高い。イラン情勢の緊張と投機マネーの流入による原油高が波及した。景気低迷で運賃や製品価格への転嫁は困難。灯油やガソリンも値上がりしており、原油高が長引けば企業だけでなく家計の負担も高まる。

 石油最大手、JX日鉱日石エネルギーはボイラーに使う重油の1〜3月の価格を昨年10〜12月比4%引き上げると表明した。製紙会社は製品価格への転嫁を続ける一方、燃料転換などを急ぐ。

 日本製紙グループ本社は石巻工場(宮城県石巻市)や吉永工場(静岡県富士市)の重油ボイラーを停止する。岩国工場(山口県岩国市)では木くずなどバイオマス(生物資源)燃料の使用を増やす。工場閉鎖も含めて重油使用量を年間15万キロリットル抑制し、10億円程度のコスト削減につなげる。

 神戸製鋼所の2012年3月期の燃料費は11年3月期比約50億円増える見通し。輸送費上昇に加えアルミニウム生産拠点の真岡製造所(栃木県真岡市)などの自家発電燃料の値上がりが響く。

 船舶用重油も過去最高値圏だ。海運大手はコスト削減へ減速航海を徹底する。商船三井はアジア―欧州のコンテナ船を増やして定期の寄港サービスを維持し、運航速度を落としている。56日だった航海日数を70日に延ばすことで燃油消費量を約4割削減できる。

 トラック、タクシーへの影響も深刻だ。トラックに使う軽油の東京・大口価格は1リットル103〜104円と昨秋より11%高い。ヤマトホールディングスは12年3月期の燃料費見込みを260億円と5億円上方修正した。

 ガス小売会社による3月のタクシー用オートガスの販売価格は昨年10月より約15%上がる見通し。サウジアラビアは原料となる液化石油ガス(LPG)の対日価格を過去最高値に引き上げた。タクシー運賃は認可制で転嫁は困難。飛鳥交通(東京・新宿)の川野繁社長は「燃料高は企業努力ではどうにもならない」と話す。

 原油高は家庭用の燃料にも波及している。石油情報センターがまとめた20日時点の灯油の店頭価格(全国平均)は前週比7円高い1缶(18リットル)1625円と7週連続上昇。長引く寒さで需要も伸び、暖房コストは高まっている。レギュラーガソリンは1リットル143.5円と2カ月ぶり高値だ。

 昨年の原油(粗油を含む)輸入額は11兆4千億円と前年比21%増えた。原油高に円高修正が重なり燃料コスト増大は必至。燃料高で企業業績と個人消費が悪化すれば景気の下振れ要因になる。