先進国の中で唯一原子力発電所のないイタリアの国民は、国民投票で改めて「原発拒絶」の姿勢を明確にした。

 背景には、東京電力福島第1原発事故の衝撃に加え、ベルルスコーニ首相らへの政治不信、重要な問題は伝統的に国民が決める−−という三つの要素があった。
 ドイツなど脱原発への動きが目立つ欧州だが、原発推進を維持する国も多く、欧州は「フクシマ・ショック」後の原発政策を巡って二分され始めた。

◇「国より自分」の伝統 首相不信も一因
 13日、過去に全廃した原発の復活の是非を問う国民投票が即日開票され、成立条件である50%超を大幅に上回る投票率に達し、復活拒否が決まった。反対票は94%を超え、国民の圧倒的多数が脱原発を支持した。
 福島第1原発事故後に国民の審判で原発反対を選択したのは同国が初めて。政府が目指す将来の原発新設計画は白紙撤回される。
 ベルルスコーニ首相は同日、「イタリアは原発を放棄し、再生可能エネルギーに依存する判断を下すだろう」と発言。政府の計画が国民に事実上、否決されたとの認識を示した。
 イタリア内務省によると、最終的な投票率は57%。国民投票の成立に必要な過半数を大きく上回り、国民の関心の高さが浮き彫りになった。

 イタリア人は87年の国民投票でも、原発建設地を自治体ではなく国が優先的に決めることや、自治体への優遇措置を拒否し、90年の原発全廃に結びついた。
 国民は、国家より地域、故郷への帰属意識が強く、国よりも自治体を信じる伝統が強い。
 一方、ベルルスコーニ首相は、原発再開策を進めたが、受け入れる自治体はなかった。それでも国民が原発を巡る2度目の国民投票を求めたのは、「政府は裏で何をするかわからない」という政治不信からだった。
 そこに福島原発事故が起き、「技術を持つ日本で起きた以上、イタリアでの原発管理は無理」という声が一気に拡散した。

 イタリアは商店などの営業時間の短さや個人の節電から、1人当たりの電力使用量は日本の約7割。それでも09年政府統計では、電力源の83%を主に原油、ガスなど海外の化石燃料に依存し、電気代は欧州一高い。
 現政権による原発推進は、膨らむ政府債務の削減が狙いだった。電力消費を大幅に減らさなければ、周辺国からの高い買電が増える。
 代替案や国の計画よりも、まずは個人の感覚に頼ったイタリア人の選択は、原発の是非を決める先例となった。

◇英仏は「推進」、欧州で二分
 ドイツ、スイスに続き、イタリア国民が「脱原発」を選択したが、15カ国に148基ある原発が電力の約3割をまかなう欧州全体で同じ機運が高まっているわけではない。
 電力の8割を原発に依存するフランスのサルコジ大統領は「脱原発は、軽率で理性のない選択だ」と強調。旧型原発の更新期を迎える英国など西欧諸国のほか、チェコやポーランドなどの東欧諸国は、明確に原発推進を打ち出している。
 欧州では、79年の米・スリーマイル島事故、86年の旧ソ連・チェルノブイリ事故を機に、原発見直し論が高まった。80年にスウェーデンが世界で初めて脱原発を決めたのを皮切りに、イタリアが87年、ドイツ、ベルギーが02年に脱原発政策を採択した。
 しかし、代替エネルギー源の確保が難しいことや、地球規模の気候変動問題を背景に原発見直し論が高まり、脱原発路線を撤回する国もあり、揺れている。

◇日本へ波及も・・・原発運転再開に影響
 イタリアの「原発拒絶」は、欧州での脱原発の流れのきっかけとなった日本にも波及しそうだ。日本の国民投票は、憲法改正の是非を問うための制度でイタリアのように、原発再開をテーマに投票の実施はできない。
 しかし、これまで「原発は安全」と繰り返してきた国や電力会社への立地自治体住民の信頼は、福島第1原発事故で根底から崩れている。関係する県知事からは「今は電力供給より安全性が先」、「国は原発再開に安全上の支障がないという一方、浜岡に停止要請した。(安全面で)何をどう評価したのか分かりにくい」と不信の声が続出。定期点検などで止まった原発の運転再開の前提となる立地自治体知事の同意が必要だが、欧州での脱原発の広がりが、原発への不安を高め、知事の判断にも影響を与える可能性がある。
 あるシンクタンクは、イタリアの国民投票について、「ドイツなどに次ぐ脱原発への真剣な動きだ。『真剣に原発について考え、行動してきただろうか』と思い起こさせる効果が日本にも出てくるのではないか」と分析。その上で、「重要な政策自体への賛否を直接、問う政治システムの可能性も示した」として、「日本でも、私たち自身がエネルギーについて意見を持ち、声に出すことで、電力政策を変革できるのでは」と期待する。

◇自然エネルギー化への一歩
 京セラは、国内の高速道路では最大となる出力約2千キロワットの太陽光発電システムを、中日本高速道路の名古屋第二環状自動車道(名二環〈めいにかん〉)に設置したと発表。トンネルの屋根の上を利用し太陽電池パネル約9500枚を設置。一般家庭約460世帯分に相当する218万キロワット時の年間電力量を発電する。
0614 名古屋市の外周部を走る「名二環」の総延長は約42キロ。パネルが設置されたのは、3月に開通したばかりの名古屋南ジャンクション―高針ジャンクションの区間(12.7キロ)。地下を走る部分が多いため、その屋根を有効活用した。道路の照明や料金所などで消費する同区間の年間電力量の40%をまかなえるという。
 年間発電電力量は、一般家庭約460世帯分に相当する約2,180,000kWhとなる見込みで、発電した電力は、照明や料金所などの電力の一部として使用。