立山の監視強化を 専門家指摘、地獄谷ガス活性化

 立山も御嶽山と同じ活火山だ。気象庁の地震計による24時間体制の監視で異常は確認されていないものの、地獄谷周辺では火山ガスが活発に噴出する状態が続く。御嶽山の噴火を受け、研究者からは「立山でも水蒸気爆発などのリスクはある。現状の監視体制や防災対策では不十分」と指摘する声も上がった。

 立山(弥陀ケ原火山)は全国110の活火山に含まれるが、御嶽山など防災上常時監視する必要がある「常時観測火山」である47の山には入っていない。2011年3月の東日本大震災以降に周辺で地震が多発し、気象庁は12年秋に室堂に地震計を1基新設。他の研究機関の地震計と合わせて観測を続けてきた。

 同庁によると、立山では今月に入っても地震は少なく、御嶽山噴火の影響は見られないという。

 28日に行われた火山噴火予知連絡会の会見でも、藤井敏嗣会長は「一つの火山の噴火が他の山の噴火に直接つながる例は認識していない」と見解を述べた。

 一方、地獄谷周辺では火山ガスの噴出が活発な状態が続き、12年春から遊歩道は通行禁止になったまま。環境省立山自然保護官事務所によると、11〜12年に観測していた地獄谷の噴気温度が100度前後だったのに対し、12年に新たに見つかった地点の噴気は140度近くまで上がっていた。

 立山室堂地区安全対策専門委員会で座長を務める東京工業大火山流体研究センターの野上健治教授は「火山活動が活発化していると認識すべき」と指摘。地震計の増設など観測体制の強化が急務とし、「国や自治体、研究者らがしっかりと連携し、防災対策を着実に進めていかなければならない」と述べた。


■室堂周辺9施設、ヘルメット調査 最大必要数下回る
 御嶽山の噴火を受けて立山町は29日、北アルプス・室堂周辺にあるホテルや山小屋など9施設を対象に、ヘルメットやガスマスクの保有状況を初めて調査し、最大必要数を大きく下回っていることが分かった。町は観光客の安全確保に向け、それぞれ千個以上を用意し、各施設に配置する方針だ。
 調査は電話で聞き取りで実施した。各施設が宿泊者、従業員の人数を念頭に回答した最大必要数を合計すると、それぞれ約1760個だった。
 しかし、実際の保有数の合計はヘルメットが約70個、ガスマスクは約100個で、従業員の作業用が大半だった。
 町総務課は「施設への配置を通じ、広範な観光客の安全確保につなげたい」としている。



岐阜県内に5つの活火山 ハザードマップ一部未完成

 県内には御嶽山のほかに4つの活火山があるが、乗鞍岳とアカンダナ山、白山の3つは県の「火山ハザードマップ」(防災地図)が完成していない。噴火時の対応を県などが事前に決めておくための重要な資料で、早期の完成が必要だ。

 県防災課によると、土石流や火山灰が及ぶ範囲を示す地図で、御嶽山の分は2009年2月に作成した。今回の噴火では気象庁の噴火警戒レベル「3」が出たため、事前の取り決め通りに火口から半径4キロを進入禁止に。今後、もしもレベル「4」になれば、半径8キロの百十一世帯に避難準備を指示する方針も決まっている。

 乗鞍岳など3つの山のハザードマップ作りが遅れているのは、気象庁や国土交通省による火山の被害想定が予算不足でまとまらないためという。

 乗鞍岳は岐阜県側だけでも年間18万人が訪れる人気の山だが、国と県、高山市などが準備会議を発足させた段階。高山市の職員は「御嶽山の噴火で急がなければならないと実感した」と漏らす。

 白山は修験道の信仰の中心で、県や白川村がハザードマップの素案を年末までに地元住民に説明する。アカンダナ山は噴火の危険性が比較的低く、県はその後に作成する予定という。

 御嶽山と焼岳のハザードマップは、インターネットで「火山防災マップ」で検索できる。