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 今月27日午前11時53分、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山の山頂。標高3067メートルの高峰だが、紅葉シーズンを迎え数百人の登山客が訪れていた。突然、ごう音と共に山頂の噴火口から黒煙が立ち上り、軽トラックほどもある岩が噴き出し始めた。石に当たって倒れる登山客が続出し、山頂は修羅場と化した。火山灰は上空10キロまで達し、付近を通る航空機は急きょ飛行ルートを変更した。

 日本政府は急きょ自衛隊と警察を派遣したが、噴火が続いたことから、救助隊が現場に到着したのは23時間後の28日午前11時すぎだった。火山灰に阻まれ、ヘリコプターもなかなか接近できなかった。警察は28日午後、山頂で心肺停止状態の登山客31人を発見し、このうち病院に搬送した4人は死亡が確認されたと発表した。心肺停止とは死亡を意味する。噴火口から有毒ガスが発生したため、救助隊は同日午後2時ごろに残り27人の救助活動を打ち切った。

 御嶽山は1979年に水蒸気爆発を起こし、91年と2007年にも小規模の噴火を起こした活火山で、気象庁が24時間体制で監視している。年間登山客が10万人に達する人気の山だ。地震と違い、火山の爆発は早ければ3−4カ月前、遅くとも数時間前には予測が可能だと日本では信じられていた。御嶽山には地震計12台、カメラ2台、傾斜計1台のほか、地殻変動観測装置も5カ所に設置されている。

 日本は、1991年と93年に計44人が死亡・行方不明となった長崎県の雲仙普賢岳の噴火を機に、噴火予知技術を開発。2000年3月に起こった北海道の有珠山噴火では、143時間前に住民1万人を避難させた。世界最高レベルの噴火予知技術を備えているとも評価されていたが、今回は予知できなかった。気象庁は「今回の爆発はマグマが直接噴出するマグマ爆発ではなく、マグマが地下水を熱することで起こる『水蒸気爆発』だったため、予知に失敗した」と説明している。

 御嶽山では今月11日に火山性地震が85回観測されるなど、噴火の前兆がなかったわけではない。気象庁は地震の発生頻度が高まったため集中的な監視を行ったが、地殻変動や山の膨張などが観測されなかったことから、爆発はないと判断した。地殻変動は噴火の直前になってようやく観測された。産業技術総合研究所の中野俊・上級主任研究員は朝日新聞に対し「火山性地震という予兆は捉えていたが、噴火に結びつかないケースもあり、(噴火警戒)レベルを上げる判断は難しい」と語った。

 今回の予知の失敗は、火山に対する日本人の潜在的な恐怖をかき立てている。日本には全国に110の活火山がある。気象庁は2009年、噴火の可能性が高い御嶽山や富士山など47火山を24時間監視対象に指定した。夏には1日1万人が登山を楽しむ富士山も、東日本巨大地震以降は微小な地震がしばしば発生している。昨年8月には1日10回以上の微小な地震が観測され、付近の湖の水位が3メートルも低くなるといった異常現象が発生した。火山爆発の前触れだとの声もあったが、気象庁は「マグマの移動を伴っていないため、噴火の前兆ではない」と説明した。

 御嶽山の噴火は、2011年の東日本巨大地震と津波以降、運転を停止している原子力発電所の再稼働にも影響を与えそうだ。周辺に火山が多い鹿児島県の川内原発は年内に再稼働される予定だが、今回の噴火予測の失敗により住民の間で再稼働反対運動が広がる見通しだ、と東京新聞は伝えている。