今冬、青森市酸ケ湯で観測史上最高の積雪を記録するなど、豪雪に見舞われた八甲田山系。暖かい日差しが降り注ぎ、山は日ごと緑を増しているが、雪解けの進行とともに山の斜面にトビや龍(りゅう)などユニークな雪形が現れ、春から初夏へ、季節の移り変わりを告げている。

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 日本雪氷学会会員の工藤樹一さん(青森市)によると、雪形には、残った雪の形を見る「ポジ型」と、雪が解けた地の部分を見る「ネガ型」がある。
 工藤さんは5月31日、小岳の南東斜面で、雪が解けた部分がトビの飛翔(ひしょう)に見える雪形を確認、カメラに収めた。「近年になく鮮明で、なかなか見られない形」(工藤さん)という。
 近くの硫黄岳では傘松状の雪形もできつつあった。昨年は6月1日にまず硫黄岳に傘松の雪形が現れ、その後、同7日になって小岳のトビが確認されたが、今年は順番が逆転した。
 長年、八甲田の雪形を記録している工藤さんは「雪形の順番が逆転したのは局所的な要因も考えられるため、判断は難しい。雪形は、地球温暖化や地形の変化、植生の改変など情報が詰まった“宝石箱”のようなもの。残雪を観察し、さまざまな『ニュー雪形』を見つけてほしい」と呼び掛けている。
 一方、青森愛盲協会理事長の工藤孝さん(青森市)は3日、妻と八甲田山系を回り、昼食のため訪れたホテルの前で思わずカメラのシャッターを切った。大岳の残雪が「まるで龍のよう」な形だったからだ。
 古くから、縁起が良い生き物として考えられてきた龍。角度によっては、今年のえとであるヘビにも見えるが、工藤さんは「龍でもヘビでも縁起がいいことには変わりない」と満足げだった。
(東奥日報)