新型スキーワックス開発 科学技術振興機構の復興プログラム 河北新報

 科学技術振興機構(JST、東京)の「復興促進プログラム」に基づく企業と大学による共同研究が、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の各県で動きだしている。被災地の産業再生にとどまらず、新たな視点で需要拡大や高度化を狙うユニークな技術も多い。その一つ、スキー用ワックス製造のガリウム(仙台市)が東北大未来科学技術共同研究センターと取り組む新型ワックス開発の現場を取材した。

20130226001 スキー板の裏面に丁寧にワックスを塗る。仙台市泉区根白石にあるガリウムの工場。開発担当の八重樫祐介さんは「科学的な手法の導入で、さらに滑りが良いワックスを生み出したい」と強調する。
 ガリウムはスキーの世界で著名な企業だ。ノルディックスキー、ジャンプ女子の今季ワールドカップで総合優勝した高梨沙羅選手をはじめ、国内外のトップ選手が同社のワックスを使う。結城谷行社長もノルディック距離の元選手で、1988年のカルガリー冬季五輪に出場した。
 同社は1月、東北大の宮本明教授(計算化学)と共同研究をスタートさせた。コンピューターによるシミュレーションなどで、ワックスの性能向上を目指す。JSTからは2015年3月までに計2500万円を受けられる。
 ワックスは通常、パラフィンやフッ素など数種類の化合物を調合し製造する。どの組み合わせにするかは、2〜3シーズンにわたる滑走テストの繰り返しで決めてきた。技術者の経験とスキーヤーの感触が頼りだった。
 共同研究ではコンピューターを駆使し、ワックスの塗り方と雪の摩擦の関係を分析。より水をはじく化合物の組み合わせを原子レベルで探る。
 ガリウムには選手経験者が多いが、八重樫さんは競技スキーの経験がない。結城社長は「経験に頼らないことでどんな成果が出るか。あえて未経験者に託した」と言う。
 研究は始まったばかり。まずはスキーの滑走面にワックスがどう浸透するかを分析する。
 「クロスカントリーでは勝敗の6割以上をワックスが左右する。五輪などで日の丸を揚げるため高性能製品を開発したい」と結城社長。「今後は科学的分析を重視する方向にシフトしたい」と強調する。
 宮本教授は「滑りを良くする研究を裏返せば、いかに滑らないかの解明にもつながる。雪道で滑らないタイヤの開発などにも応用できる」と可能性の広さを指摘する。