CO2排出量は増加と試算 会計検査院 (毎日新聞)

 会計検査院は、省エネ性能が高い家電製品を普及させるため実施された国の「家電エコポイント制度」について、制度の目的とは逆に二酸化炭素(CO2)排出量が年間で約173万トン増えたとする試算をまとめた。制度をきっかけに新しく家電を購入した消費者が多く、その分CO2排出量が増えたとしている。これに対し、制度を推進した環境省は「極端な仮定だ。制度の効果を短期的にしか評価していない」と強く反発している。

◆検査院の考え方
 検査院は家電の購入状況から、CO2排出量を独自に試算した。その結果、CO2が最も増えたのがエアコンで、期間中に購入された約737万台のうち、買い替えは約335万台にとどまり、新規購入された約402万台が排出する約243万トンを全て「純増」と判断した。
 エアコンが1台しかなかった家庭が、制度をきっかけに2台目を購入したケースなどが想定されるという。冷蔵庫とテレビでは買い替えが新規需要を上回り、これらを含めた全体では約173万トンの増加と試算した。
 購入価格に応じてポイントがつくため、消費者が通常より大型の製品を選択する傾向があったという。一回り画面が大きいテレビや容量が多い冷蔵庫が買われ、結果的に消費電力の大きい製品の購入が促されていたと判断した。検査院は「制度は経済活性化などに役立ったが、商品の新規購入や大型化で消費電力が増えることも踏まえ実施を検討する必要があった」と指摘している。

◆環境省の考え方
 これに対し環境省は家電の新規購入に伴うCO2排出量の考え方が検査院とは異なると主張。
 検査院は、制度がなければ家電製品は新規購入されないと仮定。購入が促進されたことで、その分のCO2排出量が増えるとしている。これに対して環境省は、制度がなければ省エネ効率の良い家電ではなく比較的価格の安い、平均的な省エネ効率の製品が購入されると仮定。制度で効率の良い製品が購入されればCO2排出量は削減されると試算した。
 環境省では「新規購入した時点では排出量が増えるが、省エネ効率の良い家電を長く使えば排出量は削減できる。必要な家電をどうやって省エネ効率の高いものに替えていくかが重要なのに、検査院は分かっていない」と批判した。



家電エコポイント、CO2削減量は試算の10分の1 (日経新聞)

 会計検査院は「家電エコポイント制度」を巡り、省エネ家電の普及により二酸化炭素(CO2)の年間排出量を21万トン削減できたとする試算をまとめた。制度によるCO2の削減効果を273万トンとした環境省の試算の10分の1以下の数値で、検査院は「環境省の評価は過大」と指摘した。

 環境省などが今年6月に公表した試算では、各家電の平均的な使用年数を基に、消費者がエアコンや冷蔵庫を14年前、テレビを11年前の機器から買い替えたと想定。従来機器を使い続けた場合と比べ、年間で264万2300トンのCO2を削減できたとした。また新規購入分として、省エネ性能が標準的な現行の機器と比べ8万7700トンの削減効果があるとした。

 検査院はこの試算方法について、買い替えのケースで省エネ家電との比較の対象にした11〜14年前の機器は「エコポイント制度が無くても買い替えられたと想定される」と指摘。比較対象を標準的な現行機器として算定し直した結果、買い替え分の削減効果は13万トンで、新規購入分と合わせても21万トンにとどまった。

 CO2の削減効果を巡って環境省は事業開始当初の2009年6月に年間400万トンとする試算を公表。だがその後、全消費者が1995年製の機器から買い替えるという不自然な想定や、算定根拠の資料が廃棄されたなどの問題が発覚したため、今年3月の事業終了にあたり手法を見直した上で273万トンとしていた。

 検査院は「制度の財源には国民の税金が充てられており、事業効果を明らかにする場合は算出方法を十分に検討することが必要」と指摘した。

 環境省は「試算は削減効果の最大値を求めたもので、算出方法は適正と考えている」として、同省のホームページで公表している削減効果について修正はしないという。


グリーン家電普及促進対策費補助金等の効果等について (会計検査院)
家電エコポイント制度の政策効果等について (環境省)