山で発病、遭難急増 今年すでに23人 (読売新聞)

 富山県内で今年起きた山岳遭難(8月27日現在、計87人)で、「発病」が原因となったのは23人に上り、昨年1年間の22人を上回ったことがわかった。中高年の登山ブームが背景にあり、高地での発病リスクに詳しい医師は「気圧が低く酸素が薄い高所では、持病が悪化する危険性が高い。体調が少しでも悪いと思ったら、無理をしないでほしい」と注意を呼びかけている。
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 富山県警地域室によると、登山中に救助要請があった山岳遭難者数は、今年1月から8月27日までの累計で87人。このうち「発病」が原因だったのは23人(26・4%)で、昨年同時期の遭難者92人中16人(17・4%)を大きく上回った。今年7月28日には北アルプス・剱岳(2999メートル)に向かっていた横浜市の男性(60)が手前の前剱(2813メートル)で心臓発作を起こし、死亡した。持病の狭心症が悪化したとみられる。2011年の1年間の山岳遭難者132人のうち「発病」は2番目に多い22人(16・7%)で、2人が死亡した。最も多かったのは「転倒」の38人(28・8%)。3番目は「滑落」15人(11・4%)だった。11年までの5年間、「発病」による遭難者は全体の2割前後で推移し、遭難原因の1〜2位を占めている。
 国立登山研修所(立山町)で医療講師を務める黒部市民病院の田辺隆一医師(60)は今年、「発病」が多い理由について、「天候の良い日が多かったため、慣れない中高年が登山をするケースが多かったのではないか」と話す。田辺医師によると、標高2450メートルの立山・室堂付近では、気圧と空気中の酸素量が平地の約8割に下がる。酸素量が減ると、心拍数は多い人で2〜3倍になり、最高血圧は200程度まで上がる。狭心症や不整脈などの持病を持つ人は、心臓に血液を送る冠状動脈の血流量が減り、発作を起こす危険が高まるという。血糖降下剤を服用する糖尿病患者も注意が必要。運動量の多い登山では、思った以上に血液中の糖を消費するため、低血糖に陥り、意識がもうろうとして昏睡したりすることがある。また、脳や肺に水がたまる脳浮腫や肺水腫などの急性高山病を発症することもある。寝不足や風邪気味の状態だと症状が悪化しやすく、ひどい場合、呼吸困難や神経まひに陥ることがある。田辺医師は「高山病は、高所に着いてから30分ほど休み、体を慣らすことで発病リスクを軽減できるが、持病のある人は事前に医師に相談してほしい」と話す。

 日本登山医学会ではホームページで注意点などを紹介。メール(bureau1@jsmmed.org)で質問も受け付けている。