『恋、車、スキー。今の20代男子に「消費の三段論法」が響くか?』(日経新聞)

 「恋をしましょう」「免許を、とろう」「私をスキーに連れてって」。どことなくモジモジしている人たちに向けて背中を押してくれそうなメッセージだ。この3つを発信しているのは誰か。すべて答える人がいたら、それは情報の感度が高く、行動的な人かもしれない。

■草食男子を狙い撃ち
「恋をしましょう」はセレクトショップのビームス。
「免許を、とろう」はトヨタ自動車。
「私をスキーに連れてって」はスポーツ専門店チェーンのゼビオとヴィクトリア、プリンスホテル、東急リゾートサービス4社による共同プロモーションのメッセージだ。
 どの言葉も「買ってください」とは言わないものの、消費を促すような直接的なメッセージだ。そして伝えたい相手は若者であり、男性だ。草食男子と言われる世代。

 例えば「恋をしましょう」の狙いはこうだろう。恋にファッションはつきもので、着飾ることで異性からの関心も集まる。ビームスにとって洋服は暑さや寒さを凌(しの)ぐためにあるのではない。「人の幸福を作ること」(ビームス社長室企画部の土井地博プランニングディレクター)という認識に立ち、「恋をしましょう」のメッセージが生まれた。

■30歳未満の男女の可処分所得が逆転
 昨年3月の東日本大震災を受け、日本を元気にしたい思いも込められている。創業35周年の記念キャンペーンとして初めて全社的な取り組みとして展開した。結果は、かつてビームスで買っていた顧客層にも伝わったようで、ツイッターなどでも大きな話題となった。
 残念ながら若い男性の消費意欲は旺盛ではない。先立つ原資が同世代の女性よりも少なくなっているからだ。総務省が5年に1度実施(直近調査は2009年)している全国消費実態調査によると、30歳未満の単身男性の可処分所得(月額)は21万5515円で、女性よりも2641円低かった。1969年の調査開始以来、初めて男女の可処分所得が逆転した。

■20代の免許保有男性、10年で226万人減
 トヨタ自動車が1月下旬から流し始めたシリーズCM「実写版ドラえもん 免許を、とろう」。30歳でも免許を持っていない、のび太に「教習所いかないの?」としずかちゃんが誘うシーンがある。「ネットのほうが楽しい」と言うのび太に、しずかちゃんが「もし、免許が取れたらって考えたことないの?」と問いかける内容だ。若者の自動車離れをコミカルに表現して、車への興味をもってもらおうとするCMだ。
 警察庁の運転免許統計によると2010年末の20代男性の運転免許保有者数は637万8000人。2000年末は864万1000人。10年間で約226万人も減っている。少子化の進展があるからやむを得ないが、トヨタ自動車が車を買う前の免許取得を促すCMを製作したこと自体、相当な危機感がうかがえる。

■バブル時代の「消費の三段論法」を現代に
 洋服を買って恋が芽生え、免許を取って車を買い、ガールフレンドと一緒にスキー場にGO!。そんな三段論法は20代草食男子にはなかなか通用しないようだ。

無題 スキー人口の落ち込みは若者の免許保有数の比ではない。日本生産本部が発行するレジャー白書ではスキー人口が最も多かったのは93年の1860万人。それが10年には570万人まで縮んでしまった。ピーク時の3割の水準だ。
 この苦境を打破したいと立ち上がったのがゼビオなど4社。87年に大ヒットした映画「私をスキーに連れてって」にあやかり、同名のキャッチフレーズでスキー場へ誘引する。映画ではファッションあり、恋あり、車あり。その舞台装置がスキー場だった。当時は「消費の三段論法」がまさに通用していた。
 ゼビオによると、映画を見て空前のスキーブームを謳歌した人たちにもう一度、ゲレンデに来てもらうことも狙いにある。そして子供と一緒に楽しんでもらいたいのだという。
 4社は連携して、買い物時の割引特典や、プリンスホテルや東急リゾートが運営するスキーリゾート施設での優待や割引サービスなどを用意。26日には福島県グランデコスノーリゾートで元ノルディック選手でスポーツキャスターの荻原次晴氏を招き、雪上イベントを開いた。

■10代のうちから仕掛ける
 低迷するスキーを盛り上げようとしている取り組みはほかにもあった。リクルートが全国の89あるスキー場の協力を得て、「雪マジ!19」プロジェクトを昨秋に立ち上げた。年齢が19歳ならリフト券を無料にする大盤振る舞いの企画だ。何度もゲレンデを訪れても19歳なら無料だ。
 リクルートの調査によるとスキーを趣味とするエントリータイミングは高校を卒業した最初の冬が決め手になるのだという。その年齢が19歳なのだ。リフト代が無料だとスキー場にはお金が落ちないように思われるが、初心者はスキー板や靴のレンタルを利用することが多いのでお金は落としてくれる。福島県のスキー場(16カ所)では、この発展形として20〜22歳までもリフト券を無料にする「雪マジ!ふくしま」を展開している。

 大人である多くの企業が若者の背中を押している。そうでもしないと若者が動かないくらい、若者の消費がおとなしいのだ。


どうしても、この記事に反応してしまいました。

そこのお父さん、お母さん

バブル時代の「消費の三段論法」
ハマりませんでしたか?

 「街ではお洒落して・・・」
 「フルタイム4WDに乗り・・・」
 「スキー場に行って、かっこ良く滑る・・・」

心躍らされる場面を思い出すでしょう?

でも、
価値観が多様化した今の時代、そんな復活劇はあるのでしょうか?