『3市前向き  「風評招く」警戒も』

 東京電力福島第一原発事故に伴う除染で、国から支援を受ける前提となる「汚染状況重点調査地域」への指定について、群馬県内35市町村のうち、少なくとも8市町村が要望することが分かった。3市が指定を要望する方向で検討中で、さらに増える可能性がある。群馬県は11日に自治体の意向を取りまとめ、週明けに環境省に提出する。調査は、4〜9日にかけて、各市町村の担当部課に聞き取りで実施した。

 群馬県が9〜10月に放射線量を実地調査した際、指定目安を上回った6市町村(沼田、みなかみ、中之条、東吾妻、高山、川場)は、指定を要望すると回答した。

群馬 文部科学省の上空からの測定結果(推計値)で、指定の目安を超えた地域があった渋川市、下仁田町も要望する方針だ。独自調査などのため、結論を留保している市町村もあり、桐生、みどり、安中の3市は、いずれも指定へ前向きな姿勢を見せながらも「正式な結論はまだ先」とした。同調査地域への指定が原則、市町村単位となることに警戒心も強い。前橋市は、比較的高い線量が測定された赤城山・大沼周辺などの除染は避けられない状況だが、担当者は「早々に手を挙げると、市中心部で数値が低いのに、いらぬ風評被害を招く」と慎重な構えを示した。高崎市も「11月末までに総合的に判断する」とした。

 同調査地域への指定の決定権は環境省にあるが、県環境保全課は「要望した自治体が外される可能性は少ない」とみている。ただ、今後の線量調査の結果、自治体側から指定の追加や解除の申し出があることも予想され、実際に除染を実施する自治体数は不確定だ。除染実施に前向きな自治体からは、国の支援の範囲を懸念する声が出ている。高山村の担当者は「除染実施計画の策定費や調査費は、国が持ってくれるのか」と不安そうに話す。桐生市の担当者は「全市町村で同じ基準の測定方法がない。測定場所や方法を指示できる専門家を派遣してほしい」と要望していた。


◇検討中の自治体では互いの連携が必要
 「汚染状況重点調査地域」への指定要望は、そのまま「除染区域」の確定には直結しない。ただ、11日の意向確認で、県土のおおまかな除染方針が浮かび、除染実施の第一歩となるのは間違いない。
 前例のない除染という事業に、手探り状態は続く。国からの曖昧な指示に、いら立ちを募らせる自治体も多く、川場村の担当者は「説明する側の国も県も(仕組みが)良く分かっていない」と憤る。だが、除染を実施するのはあくまで自治体だ。規模の小さな自治体は多く、ノウハウの集積や情報収集に、自治体同士の協力が必要となる。国への要望にも一貫性を欠けば、実効性は落ちるだろう。

 地域一帯の除染には、正確な線量測定や、住民意向をくみ取った計画策定、除染業者の育成など課題は山積する。効率的な実施には自治体の連携も必要。連携の旗振り役となる県にも、福島県のような除染の専門部署の設置が求められている。