サッカー日本女子代表「なでしこジャパン」のW杯優勝に対し、日本サッカー協会・小倉純二会長は19日、選手への特別ボーナス増額と記念品贈与を理事会で提案することを明かした。当初の報奨金を見直し、大幅上乗せの改定案を提出する考え。さらに、ボーナスを出すスポンサー、企業が続々と出てきており、総額では2億円に達する見込み。『なでしこ効果』で、女子サッカーを取り巻く環境が変化していきそうだ。

 小倉会長によれば、今回の女子W杯を前に、日本サッカー協会の理事会では、優勝の報奨金として1人150万円を授与する予算案が通過していた。これは「世界ランク4位から優勝を狙い、結果的にメダル(3位)を取れた場合」という暗黙の了解事項だった。強豪を破り、決勝で過去24回勝てなかった米国をPK戦で撃破しての金メダル。結果は協会の想定外だった。
 「なでしこ」には国際サッカー連盟(FIFA)から総額100万ドル(約8000万円)の優勝賞金が出る。うち50%は選手に還元される見込みで、小倉会長は「これに協会内の原資などを合わせ、財務委員会が調整し直すことになるだろう」と明言。報奨金の具体的な改定の検討に入った。
 優勝決定後には、選手から「何か記念品をください!!」と懇願された。「僕自身はFIFAのミニ優勝トロフィーを作って全員に贈りたいな。FIFAが許せばだけどね」と粋な計画も吐露。当初の報奨金×3プラス記念品の報奨金は、1人500万円になると試算されている。メンバー21人なので、これだけで計1億500万円に上る。18日には、なでしこのオフィシャルスポンサーであるキリングループが1人100万円(計2100万円)の臨時ボーナスを出すことを表明。日本テレビも日テレ・ベレーザに所属するDF岩清水、FW岩淵に特別顕彰として100万円を贈ると発表した。 さらに、菅首相がこの日の衆院予算委員会で女子W杯優勝を受け、「男子選手との比較で不十分な点があれば改善されるべきだ」と述べ、女子選手の待遇改善が必要との認識を示した。枝野官房長官も「政府として顕彰したい」と明言。
 厳しい経済的環境、長い不遇の中で成し遂げた快挙であることは日本中に知れ渡った。現段階での報奨金は1億数千万円だが、今後は女子サッカー関連のスポンサーや大手企業、マスメディアなどから“ご褒美”を出す機運が高まることは必至。最終的に、総ボーナスが2億円に達することは確実とみられる。


 そして、MVPに輝いた沢が国民栄誉賞を受賞する可能性が浮上。枝野幸男官房長官がこの日の会見で「これだけの快挙なので政府として何らかの形で顕彰したい」と示唆。スポーツ振興を担う高木文部科学相は「国民栄誉賞との話もある」と説明。震災後の日本を勇気付けた意義は大きく、政府・民主党内では国民栄誉賞を授与すべきとの声が上がっている。また、「なでしこジャパン」に対する受賞の可能性も出てきた。国民栄誉賞は個人を対象としており、チームでの受賞となれば史上初となる。


 そんな折、日本サッカー協会の小倉純二会長は、女子W杯の日本招致について、「ぜひやってみたい。2019年以降は決まっていないので、関係者と相談しながら狙っていきたい」と改めて意欲を見せている。次回の女子W杯は、15年にカナダで開催されることが決まっている。 ドイツ大会での日本女子の優勝について、国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長らが「パスをつなぐ日本のサッカーは素晴らしかった。女子サッカーは変わってきている」と絶賛されたとのことで、その機運はあるようだ。